シン・エヴァ(若干ネタバレ含む)
シン・エヴァを観てきた。
3時間があっという間だったし、ストーリーのみならず終わり方にも満足した。
鑑賞前にコーヒーを飲んだため、劇中に一度、お手洗いに席を立ったことだけが悔やまれる。
このミスだけを取っても、あと1回は劇場へ行かなければならない作品だ。
息子が父を乗り越えることは、古今東西を問わず、人間の物語の基本フォーマット。
ダメな男子に可愛い女の子たちが好意を寄せることは、思春期男子の基本フォーマット。
そして、市井の人々が戦争や災害にめげず、地味なれど力強く生きていく物語は、日本人の基本フォーマットなのだ。
この太い背骨の上に、複雑な世界観、謎のワード、スタイリッシュな映像美、思春期を刺激するキャラクターを肉付けした作品。
旧劇場版やQのような毒はなく、綾波的にいえば「ぽかぽかした」日本映画だった。
ミサトさんの自己犠牲も、極めて日本的。
戦艦の柱に自らを縛り付けて一緒に沈む艦長は、戦争もので最も涙を誘うシナリオだ。
旧劇の最後のキスよりも「ぽかぽか」した。
オマージュは歓迎だが、毒や裏切りのないエヴァは許せない、そんなハードコアなファンは満足できないかもしれない。
でも、私は満足した。
少年は父を乗り越えて男になる。
それでも女は生きる。
そして、男と女は新たな命を紡いでいく。
この物語のラストに込められた意味は、25年をともに過ごした伴走者たちに贈る「思春期からの卒業」なのだろう。
鑑賞後、途方もない切なさに襲われたのは、私だけではないはずだ。
それでも、このメッセージを好意的に受け止められたのは、私が既に思春期を卒業していたからなのだと思う。
そのことを自己認識して、改めてほんの少し寂しくなった。
とはいえ、この作品によりアスカのことが猛烈に好きになった。
いや、正直にいえば、破からずっと好きだ。
これは「思春期に戻れる作品」でもあるのかもしれない。
何にせよ、少なくともあと1回は観に行こうと思う。