暖かい冬
「今夜も生でさだまさし」が好きだ。
いや、よく考えると、意識して必ず観ているわけではないので、好きというのは誇張かもしれない。
テレビをつけたらやっていた、というレベルの接触頻度で、「お、やってる、やってる」程度の心の動きである。
言わば、LOVEではなくLIKEだ。
しかし、何が好きかって、この絵面。
テレビ業界の華やかなイメージをぶち壊す、圧倒的な地味さ。
地方の個人経営・電器店店主(しかも二代目)の寄り合いみたいなビジュアルだ。
そして、デジタルでのものづくりに真っ向から抗うようなホワイトボード・アート、視聴者とのコミュニケーション手段は「ハガキ」のみ。
画面にも会話にも、過度に人を喜ばせたり、傷つけたりするエッジはなく、ただただ緩やかに時が過ぎていく。
この番組そのものが、時代へのアンチテーゼとも呼べるものだ。
とはいえ、団塊の世代ゆえの横綱相撲を見せられているようで、現役世代としては多少歯痒くもある。
シャカリキに視聴率を追うこともないこの余裕こそ、まさに勝ち組の世代たる所以だろう。
でも、たまたま見つけたら、ついつい観るともなく観てしまう。
「今年の冬は暖かいね」
そんな気分にさせてくれる、何とも不思議な番組である。