粉砕者の日記

昔ながらの観光地、プロレス、寄席、映画、職人芸、人間の業、怪しいモノに目がない団塊ジュニアの日記

【野球部に花束を】今、最もパンクなのは「部活」だ!

予告編を観て以来、何となく気になっており。
高校の部活、小沢仁志、電気グルーヴなどなど、脳内フックに引っ掛かってくるキーワードばかり。
ということでお盆の最中、ひとりで観てきました。

果たして…これは紛れもない傑作!
昨年夏に『いとみち』を観た時に近い衝撃でした。
(方向性から俳優陣まで真逆ではあるものの)

これ、学生時代に部活をやっていた「男子」であれば、間違いなく心揺さぶられると思います。
エンドロールで言葉にできない感動に浸りながら、改めて「部活は日本が誇る文化である」と再認識しましたから。

本入部の後に先輩たちが激変するという伝統芸
代々受け継がれている謎の儀式
(それが許される閉鎖性)
哲学と狂気がカオスに内在する部活動顧問
とても同じ10代とは思えぬ貫禄の3年生たち
どうでもいい理由で退部を悩む同級生
ほんの弾みで好きになってしまう思春期マインド
同じ部活の同期というだけなのに、いつの間にか親友になっていくシステム

ああ、次から次に部活賛美の言葉が溢れてくる…。

で、この作品の大きな魅力は「そんなに強くない」ということなんですよ。
当然、目指すのは勝利なんですけど、甲子園に出るなんてことは考えていないんですよね。
強豪私立にはコールド負けする「都立の中でそこそこ強い高校」という圧倒的リアリティ。
その枠組みの中で、無駄なことも含めて全力疾走する様こそ、まさに青春なのです。
青春はクレイジーで、部活はまさにパンク。
そこに教育的価値を詰め込もうとする行為自体、狂気がないとできない仕事ですよ。
(だから、令和の今、奈落の底に落ちる部活顧問たちが続出しているわけで)

加えて、こういったテーマの面白味のみならず、俳優陣の素晴らしさたるや…。

主演の醍醐虎汰朗には感動しました。
こういう地顔が良くて、少し小柄な「その代のリーダー」って、めっちゃ多いと思うのです。
別に頭がキレるわけでも、技術が高いわけでもないのに、何か変に人望があるヤツ。
また、表情がいいんですよ。
怯える顔、茫然とする顔、そして喜ぶ顔。
男として「羨ましさ」を感じましたね。

そして、高嶋政宏の怪演。
こんなにマッドで突き抜けた顧問役をできるのは、日本の俳優でも少数なのでは、と。
冷たい熱帯魚』で、でんでんを観た時に近い衝撃がありました(少し盛っています)。
シド・ヴィシャス的というか、何というか。
これはもう代表作でしょう、間違いなく。

併せて、今作品の目玉でもある小沢仁志。
予告編でも描かれているのでネタバレじゃないのですが、あくまで「新入生が3年生に感じたイメージ像」。
つまり「小沢仁志に見える」というだけなのです。
この小沢仁志の使い方は、ある意味で革命だと思うんですよ。
初めて3年生たちと顔を合わせた内面の衝撃を表現するには、これ以上の配役はないでしょう。
(ユニフォームを着た「小沢仁志たち」がグラウンドを歩いてくる様は圧巻でした)

他にも語れる俳優たちが盛りだくさん。
前田智徳のような無口すぎる先輩とか(見た目はどう見ても40代)。
新入生に自己紹介させる儀式で「お前は!誰だ~!」と叫ぶ先輩も素晴らしかったなあ。
もちろん、儀式で最高なのは、坊主頭にする時に「ええねん!」と歌う小沢仁志なんですけど。

ああ、今後も観続けたい作品に出会えた喜び。
今日の観客の少なさからして、早々に上映館が減っていくものと推測されます。
「高校の部活動マニア」は、予定をキャンセルしてでも、早急に観に行くべき作品です。
(部活に興味がない人は、コンプラ的不快感満載なので、観ないほうが無難です)

とりあえず、私は再度観に行きます!

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