粉砕者の日記

昔ながらの観光地、プロレス、寄席、映画、職人芸、人間の業、怪しいモノに目がない団塊ジュニアの日記

すばらしき世界

※2/11にSNSで書いた感想です。

 

今日公開の映画を早くも観てきました。
予告編を観て以来、待ち遠しくてたまらず。
果たして、観賞後はしばし茫然…。
役所広司、そして西川監督の凄みに痺れました。
たぶん、ずーっと心に残る作品になると思います。
映画好きと福岡人にはオススメです!

以下、感想メモ。

『すばらしき世界』の感想。
まずもって「服役者の行進」(手をピンと伸ばして真っ直ぐ歩く様)に私は弱いのです。何というか、矯正された感(されたい感)が強く出るというか。
冒頭から前半に掛けて、役所広司が行進するシーンが出てきます。老いと規律のコントラストがたまらなくて。

行進だけでなく、整理整頓術やミシン、木工など。刑務所で培った技術も至るところで出てきます。食事の際は、ピンと背筋を伸ばして正座。
これらの「社会で生きていくための基本姿勢とスキル」が、出所後の世界で全く通用しない虚しさ。大切なのは、目に見えない「信用」なのだと。

その「信用」とは一体何なのか?
社会で問題を起こさず生きていく所作とは何か?
ラスト近くで役所広司が支援者たちに宣言した「辛抱します!」との言葉に考えさせられました。
不器用だけど己に誠実な「初老の前科者」を通じて眺める世界。胸に沁みました。

役所広司の素晴らしさたるや。もしかすると、私が観てきた俳優の中でもベストなのかも。
純粋さ、優しさ、ユーモア、そして狂気と暴力性が、極めて自然に発せられてました。
まるで実在するその人のように。
かすかに残る福岡弁のナチュラルさ(筑紫野市出身との設定)。唸りました。

役所広司の兄弟分の組長役が白竜!
その奥さん役がキムラ緑子
北九州イズム全開の演技に心を掴まれまくり。戦慄するレベルのリアリティでしたよ。
弁護士役の橋爪功梶芽衣子夫妻、ケースワーカー役の北村有起哉も良かったなー。
六角精児の「市井の人」感も最高でした。

何しろ、主人公が筑紫野市出身で、福岡市内の養護施設で育ったとのシーンだけで、ポロポロ涙が出ましたよ。
北九州に向かう飛行機はスターフライヤー、養護施設に向かうバスは西鉄
福岡人は要チェックだと思います!

最後に。胸がキュッとなったシーンが、役所広司がアパートの電灯の紐を人に見立てて、ボクシング風のパンチを繰り出している場面。
うわっ懐かしい!中学生の頃にやってた!…と。
つまり、子どもの心を持つ初老の男の物語。
役所広司は素晴らしい!

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