粉砕者の日記

昔ながらの観光地、プロレス、寄席、映画、職人芸、人間の業、怪しいモノに目がない団塊ジュニアの日記

【前科者】リリー・フランキーの存在感

予告編を観て興味を持ち、鑑賞してきました。
直観的な感想は「よくできたヒューマンドラマ」。

加害者の更生と被害者の心情。
加害者自身が、かつての被害者という負の連鎖。
容易にセーフティネットが破れる現状(良くも悪くも担当者の熱意や職務意識に依存する体制)への強い批判。
こういった重いテーマと商業的成功を両立させようとしている点で、とても意欲的な作品でした。

社会の中でも貧しい層の方々を描いたドラマなれど、有村架純にも森田剛にも隠しきれない「スターとしての華」があり。
(とはいえ森田剛の訳あり感には痺れました)
ベテラン俳優陣にも、演技者としての「安定した技術」を作品のそこかしこに感じました。
だからこそ、テーマの重さよりも「物語としての安心感」が勝り、エンドロールまで心穏やかに観続けることができたのだと思います。
本来のストーリーからすると、目を背けたり、心が掻き乱されるシーンが続出するはずなので。
社会派エンターテイメントの面目躍如でしょう。

唯一の例外は、リリー・フランキー
森田剛の義父役ですが、ひとりだけ「フィクションとノンフィクションの狭間」に佇んでいました。
画面に映る度に、観客を不穏にさせる存在感。
登場時間は短いのに、社会派エンターテイメントの「社会派」のパートを必要以上に担っており。
『凶悪』『SCOOP!』『凪待ち』での “信頼” もあって、工事現場で警備員をするリリー・フランキーを観た瞬間、条件反射で「うわぁ…」と思ってしまいました。

別の意味でマキタスポーツも良かったなあ。
体中から滲み出る「叩き上げ感」が最高でした。

良いヒューマンドラマでした。

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