粉砕者の日記

昔ながらの観光地、プロレス、寄席、映画、職人芸、人間の業、怪しいモノに目がない団塊ジュニアの日記

【コーダ あいのうた】普遍的な巣立ちの物語

観てきました!
何しろ、ミーハーなものですから。

聴覚障がいの家族の中で育った女子高生(健聴者)が、歌を通じて「外の世界」と「家族」の狭間で葛藤し、そして自分の道をみつけていく「巣立ちの物語」。

とてもベタなあらすじですし、聴覚障がいを扱ったテーマである以上、どこか啓発的で型にはまった映画なのかな…と斜に構えていたのですが。
これがもう本当に型破りでビックリ。

家族が驚くほど下品で人間臭く。
手話で語られる言葉は極めて汚く、興味関心はお金・大麻・アルコール、そして性生活。
(母親はオシャレや露出の高い服が大好き)
映画の途中から「主人公以外の家族は耳が聴こえない」という設定が「デリカシーのない家族に振り回される女の子」に脳内転換され、コメディを観ているように何度も吹き出しました。

何というのでしょう。
コミュニケーションの道具は手話なれど、その中身があまりに下衆ゆえに、障がいだったり手話だったりの「突っ込めない健全性という違和感」が全くないというか。
同じ人間だと無理して言い聞かせる感覚はなく、自然に「どうしようもないな、この家族」と思っていました。

でも、途中、障がいがないゆえの疎外感が家族と主人公の双方に深く横たわっていることが分かります。
それが途方もなく切なくて。
ただ、子どもの才能を理解できず(しようとせず)自分たちが信じる幸せの中に閉じ込めようとするのは、親子の普遍的な葛藤なのだとも思います。
それが聴覚障がいという如何ともし難いものにより、より強化されて実感できてしまうというか。

主人公と家族が、その壁を(ある意味でサラッと)乗り越える様に感動したし、ラストの数分間は嗚咽を漏らすほど涙しました。
この作品、主人公目線のように見えて、父親とか母親目線なんですよね。
とても、とても、身につまされました。

いろいろと整理できずに書き連ねましたが、結論として「素晴らしい作品」ということです。
主人公のエミリア・ジョーンズの瑞々しさ、父親役のトロイ・コッツァーの佇まいは、間違いなく一見の価値があると思います。
いやあ、いい映画だった!

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