粉砕者の日記

昔ながらの観光地、プロレス、寄席、映画、職人芸、人間の業、怪しいモノに目がない団塊ジュニアの日記

【Ribbon】監督・脚本・主演、のん

新宿まで観に行きました。
監督・脚本・主演、のん。
あまちゃんこの世界の片隅に、から多大な影響を受けた者の務めとして、観ておかなければならないだろうと。

物語は、コロナ禍で卒展が中止になり、漠然と自粛の日々を過ごす美大生が主人公。
シーンは、大学、公園、そして部屋のみ。
ドラマチックといえるような展開はほとんどなく、淡々と主人公の日常が過ぎていく。
家族のコロナ対策はエキセントリックだが、その家族も含めて登場人物は至って普通の人たち。
(でも、そういえば最初の緊急事態宣言の時は、みんなこんな感じだったかも…とハッとする)
ちょっとした冒険を経て、主人公が自分自身を取り戻していくまでを描く。

正直、途中ちょっと間延びしたんです。
日常の展開がいつまで続くのかと心配になって。
こちらの集中力が切れたからか、のんや他の俳優の演技も急にわざとらしく感じてしまったり。
リボンのCGはとても綺麗で、主人公の心のヒダみたいなものを繊細に表していたとはいえ。

でも、この日常での主人公の心の動きを丁寧すぎるほど丁寧に描いていたことが、ラストシーンで凄く効いて。
美しい光景に心が揺さぶられ、エンドロールでサンボマスターが流れた瞬間、ポロポロと涙がこぼれました。
コロナ禍の今しか撮れない、そして今だからこそ心に響く、素晴らしい青春映画でした。

いやはや、凄まじい才能。
一体どこまで行くのだろうと、唖然としました。
デビュー間もない頃からアーティストとして大成していく様をリアルタイムで観るのは、ファン冥利に尽きるというもの。
まだまだ、これからも追いかけたいと思います。

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【江口寿史RECORD展】ひばりくんの凄み

最近、仕事でちょくちょく渋谷に行きます。
何度行っても、駅のラビリンスぶりに閉口。
街や人々の浮かれ方含めて、少し苦手です…。

ただ、昨日は心底ワクワクして渋谷へGO。
江口先生のジャケットデザイン展示会です。

子どもの頃から、そのイラストの完璧さ、同じ日本に生きているとは思えぬPOPさに、強い憧れを持ち続けてきました。
「ひばりくん」は、その象徴的存在。
人としての生活感の無さ、不完全ゆえの完璧な美しさ、そして常識を壊す革新性(しかもそれを全く感じさせない)。
今はゴチャゴチャぶりにウンザリしますが、それこそ昔の渋谷への憧れに近い透明感というか。
とにかく、江口先生の絵が大好きということ。

果たして、本当に素晴らしかった!!!
それぞれの作品の下絵もあり、感涙ものでした。
初期に描いた岡村靖幸のジャケットが好きだなあ。
吉田拓郎のものも最高。
でも、やっぱり銀杏BOYZですね。
絵の凄さって、言葉では伝えにくいのですが。
この気負いのなさとカッコよさは本当に凄い。
まさに天才だと思います。

ひばりくんもエイジも読みましたが、私にとって江口寿史先生は漫画家ではなく「何かの刹那を一気に切り取り、それをイラストとして表出させることができるアーティスト」。
それが信じられないぐらいPOPで、まさに日本が生んだ気鋭の現代アート作家だと思います。

いろいろ言いましたが、何はなくとも、みんな「ひばりくん」が大好きということです!

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【空也上人と六波羅蜜寺】日本を代表する仏像アート

少し前に行ってきました!
それこそ中学時代から「空也上人像」の大ファン。
南無阿弥陀仏という言葉の一つ一つが仏像になったという逸話を、彫刻として見事に表現。
その思想性と芸術性の高さにノックアウトされ続けてきました。

果たして今回、生・空也上人像に初めての邂逅。
いや、痺れるほど興奮しました。
その表情、腰の曲がり方、衣類の皺、横から見た姿、後ろから見た姿、そして口から表出された6体の仏像たち。
これを芸術と言わずして何と言いましょう。
ああ、時間がない中でも来て良かったと、心の奥底から噛み締めました。

他の像で印象的だったのは運慶像ですね。
まるで、そこに座ってるかのようなリアリティ。
意志を感じる表情とゴツい手。
それでいて、ほんの少しデフォルメされているのが何とも日本的なのです。

物販コーナーには、空也上人好きのおじさん&おばさんたちが、血眼でグッズを買いまくっており。
特に、空也上人フィギュアは、多くのファンたちの瞳孔をMAXまで開かせていました。
私も、一筆便箋やポストカード、六波羅蜜寺特製のお香などを、たんまりと買い込んだ次第。
ただ、焼印がクールな「茶の菓」が売り切れていたことには、心底、ガッカリしました。
もっと早い時間に来館予約すべきでした…。

とはいえ、春の陽気と仏像に気持ちも晴れ晴れ。
会期中、もう1回は上人像を拝みに行く予定です。

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【楳図かずお大美術展】日本アート史に残る天才

六本木ヒルズに行ってきました。
間違いなく、100年後の美術の教科書に載る人。
あらゆる意味で、圧倒的な才能です。

新作となる絵画(その数なんと101枚!)を観て、あまりの凄さに何度となく仰け反りました。
85歳にして衰えぬ創作意欲とクリエイティブ。
これを天才と呼ばずして、何と呼びましょう。

子どもの頃、兄の影響で『漂流教室』に出会ってしまい、そのスケール感、普遍性、そして途方もない面白さに、心を奪われてしまいました。
様々な事件、天災、疫病の流行を経験した今、50年前に描かれた内容がいかに先見性に満ちていたかを気付かされています。
今もまだ新しい。
まさに日本アート史に残る珠玉の古典です。

そして、最後の連載作品となった『14歳』。
大学時代に貪り読み、漂流教室で描かれることのなかった「人類が滅んでいく様子」に戦慄しました。
もはや哲学ともいえる難解かつ壮大なストーリー。
最終的に「我々の宇宙は別世界にいる小さなイモムシの中のちっぽけな空間だった」との展開に度肝を抜かれたものです。
(他にも、人類最後の子どもの名前が「アメリカ」、15歳以上の人類滅亡後にゴキブリが高度な知能を持って人類を神と崇めるようになる…など)

今回の美術展は、漂流教室に始まり、ロボットが人間を超越する新作(『わたしは真悟』のオマージュ的寓話)を経て、14歳で終わります。
全てに貫かれるのは、未来(子ども)への希望。
要所要所で、気鋭のアーティストとコラボあり。
まるで傑作映画の鑑賞後のように茫然する感覚。
いやあ…凄いものを観た!

思わず、ポストカードを何枚か買っちゃいました。
大満足です!!!

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【前科者】リリー・フランキーの存在感

予告編を観て興味を持ち、鑑賞してきました。
直観的な感想は「よくできたヒューマンドラマ」。

加害者の更生と被害者の心情。
加害者自身が、かつての被害者という負の連鎖。
容易にセーフティネットが破れる現状(良くも悪くも担当者の熱意や職務意識に依存する体制)への強い批判。
こういった重いテーマと商業的成功を両立させようとしている点で、とても意欲的な作品でした。

社会の中でも貧しい層の方々を描いたドラマなれど、有村架純にも森田剛にも隠しきれない「スターとしての華」があり。
(とはいえ森田剛の訳あり感には痺れました)
ベテラン俳優陣にも、演技者としての「安定した技術」を作品のそこかしこに感じました。
だからこそ、テーマの重さよりも「物語としての安心感」が勝り、エンドロールまで心穏やかに観続けることができたのだと思います。
本来のストーリーからすると、目を背けたり、心が掻き乱されるシーンが続出するはずなので。
社会派エンターテイメントの面目躍如でしょう。

唯一の例外は、リリー・フランキー
森田剛の義父役ですが、ひとりだけ「フィクションとノンフィクションの狭間」に佇んでいました。
画面に映る度に、観客を不穏にさせる存在感。
登場時間は短いのに、社会派エンターテイメントの「社会派」のパートを必要以上に担っており。
『凶悪』『SCOOP!』『凪待ち』での “信頼” もあって、工事現場で警備員をするリリー・フランキーを観た瞬間、条件反射で「うわぁ…」と思ってしまいました。

別の意味でマキタスポーツも良かったなあ。
体中から滲み出る「叩き上げ感」が最高でした。

良いヒューマンドラマでした。

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【ドライブ・マイ・カー】エンタメと文芸の狭間

今更ながら観てきました。
結構、ミーハーなものですから。

きっと、いやかなり良い映画なんだろうな…と。
とても長い作品にも関わらず、最後の最後までどうなるか分からずにドキドキしましたし。
どんなに近しい人であっても、その人の全てを理解するのは不可能であるとの諦観も共感できました。

村上春樹原作とか、脚本の凄さとか、海外での評価の高さといった情報を事前に知らずに観たかったな…というのが、観終わった直後の感想。
何も知らずに観たら、相当な衝撃だったと思うので。

変に前評判を聞いていたせいで、全てのことが伏線に見えてしまい、気になって物語に没入できませんでした。
いや…というか、観客に没入させないような、ある意味で強い意志のようなものすら感じました。
エンタメと文芸との狭間。
このあたりの味わいが、世界中のクリエイターや映画マニアに支持されているのかもしれません。

最後までハラハラしたし、人の心理の不可思議さを改めて実感できたし、緻密に構成された人物像とストーリーには感嘆しました。
あと2〜3回観ても、新たな気づきがありそうです。
でも、鑑賞後の帰り道で思ったのは「パーッと “ロッキー4” とか “ランボー3怒りのアフガン” なんかを観たいなあ」ということ。

そう、大衆はシンプルで消化しやすいものが好きなのです。

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【恋はくえすちょん】ストリーミングの罠

最近、音楽ストリーミングサービスを利用し始めました。ワイヤレスのイヤホンも買い、Bluetoothで接続して聴くという、若者的な流行に乗りまくっています。
最近のサービスは便利なもので、私の趣味嗜好に合わせて、勝手にマイベストを組んでくれます。本日は以下のアーティストのラインナップでした。

エレファントカシマシ
吉幾三
和田アキ子
竹原ピストル
松鶴家千とせ
おニャン子クラブ
人間椅子
銀杏BOYZ
西田ひかる
筋肉少女帯、など

カッコつけて、スポーツクラブで運動する時も聴いています。久しぶりにベンチプレスをしていたら、挙上する瞬間に『俺ら東京さ行くだ』の前奏が流れて、危うく潰れかけました(改めて名曲ではありますが)。スポーツクラブに向かう時にも『サンサーラ』が流れて、途方もなくネガティブな気分になってしまったり。TPOに合わせた選曲が課題です。

今、抱えている最大の悩みは、頻繁にBluetooth接続を忘れること。今日は、エレベーター内で『恋はくえすちょん』を大音量で流すという失態を演じてしまいました。同乗していた住人には「お前のほうが謎だ」と思われたのではないかと。

というわけで、自宅のドアに「ブルートゥースを繋げる」と大きくマジックで書いた貼り紙をしています。デジタルとアナログを、ひっきりなしに行き来している毎日です。

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